※ 2月17日テキスト追加しました!
「憲法と『建国記念の日』を考える2・11集会-安倍政権の暴走とナショナリズム-」が2月11日(水)、「フォーラム平和・人権・環境」の主催で東京都千代田区の日本教育会館にて開催された。
横浜市立大学名誉教授の中西新太郎氏が「若者とナショナリズム」と題して講演し、「子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会」の相可文代氏は、「『教育委員会アンケート』を実施して」と題して講演を行った。
- 記事目次
- 民族観念を持たず、政権の政策を問題視する人を「反日勢力」と見なす「J国家主義」
- 「政治に関心を持ってはいけない、ろくなことはない」?
- 15年目を迎えた教科書問題のいま
- 講演 「若者とナショナリズム」講師 中西新太郎・横浜市立大学名誉教授
- 報告 「『教育委員会アンケート』を実施して」相可文代さん(子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会)
民族観念を持たず、政権の政策を問題視する人を「反日勢力」と見なす「J国家主義」
中西氏は、現在の右傾化現象の最大の基盤は若い世代ではないと語る。以前は、週刊誌でも中国、韓国に対して辛辣な表現が頻繁に記事になっており、その読者層は主に団塊の世代だと指摘。
他方、ネット右翼は格差社会の下で困窮した若年層が中心だと言われている。しかし、大阪大学大学院准教授の辻大介氏のレポートによると、ネット右翼は一概に低学歴とも言えず、所得階層についても、高低いずれかに偏るような有意な傾向は認められなかったという。中西氏は、歴史修正主義に親和性を感じている有力な層について、「現在の仕組みの中で利益を得て、その利益を失いたくない人達」と推察した。
日本社会の右傾化現象を進行させている歴史的背景について、中西氏は、新自由主義・グローバリゼーションがもたらした東アジア世界の変化などにより、新たな歴史的条件の下での国家間紛争が拡大していることが、国家主義を広げていく基盤になると指摘する。
80年代以降のこのような動きは、従来の国家主義より敷居が低く、伝統的な民族観念を持たなくても成立していることから、中西氏はこれを「J国家主義」と呼ぶ。「J国家主義の重要な基準は、反日的でない」ことだと語り、反日と言っても中国や韓国の政府や人々を指すのではなく、辺野古基地建設に反対する人々や原発再稼働に反対する人々も反日と言われるのが実情であることから、安倍政権の政策などに問題提起する人々が反日勢力と規定されてしまうのが特徴的だと分析。歴史像の焦点を変えられてしまった世界が、学校で教わることと並行して、ネットや雑誌などで作られているという。
「政治に関心を持ってはいけない、ろくなことはない」?
中西氏は、60年代70年代の学生運動の頃とは違い、80年代以降では、「政治に関心を持ってはいけない、ろくなことはない」ということを、社会が教えていると指摘。
その背景には、学校の授業でも民主主義や憲法を教えているが、子どもたちは身の回りに起きているいじめなどから、実感を持って主権者としての権利を受け止められていない状況があるという。結果、違う規範の中で、子どもたちは自分たちのルールを作っていったと中西氏は考える。
日常生活において、民主主義、政治的な話を持ち出すのは、独断的かつ抑圧的だというイメージを持ってしまっているため、そうしたお互いの雰囲気を感じ取りながら、上手く関係を結んでいく方が大切だと考えてしまうという逆転現象が起きていると、中西氏は分析。
従来の公共性とは別の代替的な公共性が育ちつつあり、従来の正義とは全く逆のベクトルへ向かって、反日的なものは許しておけないという状態になってしまっているという。
中西氏は、自分たちが生きている現実は、民主主義や憲法から乖離している存在だ、と受け止めている人がいるということを認識する必要があると主張。権利を勝ち取る道筋をどうやって立てるのかが問われているとし、その為には、身動きがとれない社会から、違った社会へと自らがしていく為に、人とのつながり方や生きるのに役立つ知識が必要だと述べた。
そして、「尊厳という感覚を、自分たちの現実から、しっかりと捕まえることを基盤にしながら、歴史的な現実と尊厳の感覚をつなげていく努力が必要ではないか」と訴えた。
15年目を迎えた教科書問題のいま
2001年に「新しい歴史教科書をつくる会(以下、つくる会)」の作った教科書が扶桑社より発行された。この教科書採択の問題が大きく社会問題化してから、教科書問題は15年目を迎えている。
元社会科教員でもある相可氏は、「ネットで飛び交っているようなことが正式な日本の歴史、世界の歴史として教えられていけば、どのような日本人が育っていくのか。末恐ろしい気がします」と警鐘を鳴らす。現在、学校現場では、教科書をめぐる攻防戦が行なわれているという。相可氏は、つくる会系の教科書の特徴を説明。過去の日本が行った戦争の正当化や、戦争被害・加害について、どちらも小さい描写になっているという。(IWJ・松井信篤)
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